音楽は芸術か?
渡辺裕著『歌う国民』(中公新書)という本を読み始めた。
明治時代に生まれた「唱歌」なるものをめぐって展開される、日本人の歌についての本である。
この本によると、〈「国民づくり」のツールとしての音楽〉として、「唱歌」は生まれたという。
どういうことかと言うと、明治維新後、日本政府は近代国家として「日本」という国を作り直すことが喫緊の課題であった。
それまで、日本に住む人にとって、「日本」という国を意識することはあまりなく、「日本国民」という意識もほとんどなかった。
でも、それでは近代国家としての日本は成立し得ない。
政府はどうしても、「日本国民」という意識を人々に植え付ける必要があった。
そのための有効な手段として、明治政府は音楽を利用しようとしたという。
「唱歌」を作り、広めることによって、「日本国民」というアイデンティティ意識を確立しようとしたのである。
ここにある「音楽」というものは、「芸術」としの機能を持たない。
「娯楽」という機能も持たない。
ここにはどんな機能があるだろうか?
「教育」とでも言ったら良いか?
一口に音楽と言っても、その目的に応じて様々な機能が生じる。
翻って、僕らが普段触れている、バンドによる音楽はどんな機能を持っているだろうか?
そんなことは考える必要はないかもしれない。
けれど、僕はそんなことも考えたくなってしまう。
自明なこととして意識されないことに一度疑問を持ち、先入観から一度離れて、改めて「音楽」というものを見つめ直すことは、新たな可能性を模索することにも繋がると思う。