それでも音楽の話をしよう

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ブルースに誘う〜ボブ・ディランの新譜から〜

ボブ・ディランの新譜を聴いた。

タイトルは『Rough and Rowdy Ways』という。

アルバムの詳しい情報は知らない。

音から得た情報だけを元にして書いていこうと思う。

 

全体を通して聴いてみると、静かなアルバムという印象を受ける。

曲調としてはフォークやブルースといったところか。

ボブ・ディランが弾き語るというか、音楽に乗せて言葉を伝えることに重点が置かれているという点では、いかにもボブ・ディランなアルバムだと言っていいだろう。

最後の「Murder Most Foul」という曲は、なんと17分もある大曲である。

「Blowin’ in Wind(風に吹かれて)」と「Masters of War(戦争の親玉)」を足して、それでいて2で割らないような曲だな、と思った。

というか、それでも長さは全然足りないのだけど。

 

アルバムを通して聴いて惹かれるのは、僕はやはりブルースな曲だ。

具体的には、2曲目「False Prophet」、6曲目「Goodbye Jimmy Reed」、8曲目「Crossing the Rubicon」という3曲で、どれも違ったタイプのブルースである。

そして、それぞれの曲にそれぞれの魅力がある。

今回はそのうち、「Goodbye Jimmy Reed」に注目して、ちょっと分析的に聴いてみようと思う。

 

ジミー・リードは、言わずと知れたブルースマンだ。

曲のタイトルからは、そのジミー・リードについて歌った曲だと推測ができる。

けれど、僕には歌詞を聞き取る英語能力はない。

歌詞の内容が分からない。

調べてもいない。

あるいは、ジミー・リードの名前は出てくるが、内容的にはジミー・リードにあまり関係ないのかもしれない。

 

「Goodbye Jimmy Reed」は、12小節のブルース進行がベースとなっている。

ベースとはなっているが、少し変則的である。

1拍分余計なのである。

4分の4拍子が12小節分あって、プラス一拍分付け足されていると考えればいいのか。

ただ、流れで聴いているとギターのフレーズと相まって違和感はない。

いや、多少の違和感は感じるかもしれない。

そうだとしても、それが逆にいいアクセントになっている。

 

この12小節+1拍を一塊りとしてそこに歌が乗り、これを6回繰り返す構成となっている。

一番初めにはイントロが2小節入り、一塊りの合間ごとにも2小節だったり4小節だったりの間奏が入る。

ちなみに、6番目の塊だけコード進行が少し違うようだ。

ワンコードで通している箇所がある。

そして、最後は7番目の塊に進むようにして、そこでは歌が入らずにハーモニカが入ってきてフェードアウトして曲が終わる。

 

楽器編成はどうだろうか?

ドラムとベース。

それにギター。

これは3本と考えていいのだろうか?

ギターの聴き分けは、僕にとってはちょっと難しい。

それにハーモニカに、ボブ・ディランの声。

どこをどう切り取ってもブルース・フィーリングに溢れている。

スネアの、低くて荒い感じの音が好きだ。

深胴のスネアだろうか?

ギターのバッキングやリフもブルースそのものだし、ハーモニカはジミー・リードのようだし、ディランのだみ声もマッチしている。

 

と、ここまでじっくり曲を聴いてきて、ある一つの感覚に気付いた。

感覚というよりも欲求といった方がいいか。

それは、「やっぱりブルースが好きだ。もっとブルースを聴きたい。」というもの。

そしてもっと言えば、「ジミー・リードを聴きたい。今すぐに。」という欲求が生まれた。

「Honest I Do」、「Big Boss Man」、「I Ain’t Got You」、「Baby What You Want Me to Do」など、もちろんすぐに聴いてしまったのは言うまでもない。

「グッバイ・ジミー・リード」は、サヨナラを言うどころか、ジミー・リードに誘う曲であった。

少なくとも僕にとっては。